どんなに設備を整えても、どんなに暖かい看護を心がけたとしても、ペットにとっては、動物病院の入院ケージに入れられていることはストレスになります。ペットにとって、最も好ましいのは、住み慣れた自宅でケアしてもらえる「在宅医療」に他なりません。在宅ケアにしたら、元気が出てきて、食欲も旺盛になり、治療の効果も上がるということも多いのです。
在宅医療を勧める顕著な例として上げられるのが「終末医療」、つまり余命いくばくもないと診断された動物に対して行う「ターミナルケア」の場合です。動物の苦痛を緩和しながら、そのクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を充実させることで、残された時間を飼い主さんとともに穏やかに過ごしてもらうものです。もちろん、動物が自らの命を縮めることを望むようなことはありえませんが、ストレスを感じながら、動物病院の入院ケージで過ごすよりも、安心して過ごせる我が家で大好きな飼い主さんと一緒にいられるほうが、はるかに幸せなのではないでしょうか。
入院治療の方が治療範囲は広く、様々な治療ができるということは事実ですが、在宅医療においても輸液ポンプ(自動点滴装置)を使用しての点滴治療、酸素吸入、各種モニターなどの診療は十分可能で、入院治療に匹敵する治療環境を整えることも可能です。
そして、在宅医療を行う場合に大切なのが、優秀な動物看護師による日常的なケアです。容体が急変するような時には獣医師による処置が必要ですが、例えば、慢性の内臓疾患などの場合には、動物看護師が出向いて動物の日常的なケアを行うとともに、状態を観察したり、飼い主さんに様子を聞いたりして、それを獣医師に報告してもらうことになります。このような場面でも、動物看護師の果たす役割はとても大きいのです。